機動戦士ガンダム第08MS小隊
アプサラス計画
一体どういう流れを受けてか、96年突如として我々の前に現れた作品。何の記念作品であったワケでもないが、そのクオリティーはシリーズ屈指のもの。舞台は一年戦争末期、地球は地球でも密林地帯が主として描かれている。富野作品ではないためニュータイプの概念はないものの、主人公とヒロインの間で繰り広げられる奇妙なロミオとジュリエットは、それに近いものがあった。ちなみにこの作品、監督の神田氏が途中で亡くなられたため、後半は飯田氏へと受け継がれた。そのため、前後では作風も異なる。個人的には戦略的要素の絡んでくる後半のほうが、脚本だけなら好き。ちなみに大まかなストーリーは以下の通り。主人公シローは、宇宙でアイナと出会う。敵同士ながらも絶望的な状況の中で助け合う二人には信頼関係が生まれた。そののち地球に降下した二人の間には……。
地球連邦(極東方面軍)
マドラスに拠点を構える軍団。ライヤー少将が指揮、密林地帯を中心にジオンと戦う。他の戦線から集まった兵力を擁して進軍するも、アプサラスの出動によりラサ基地攻略戦において壊滅に近いダメージを受けた。ライヤーはこのとき戦死している。
ジオン公国(ラサ基地)
デギン公王直裁のアプサラス計画遂行のため、技術将校を中心にして建てられた基地。戦力の面は、司令のギニアス少将の臣・ノリス大佐らベテラン陣が支える。計画実行の途中オデッサでの敗北によるのケラーネ師団の影響を受けるも、アプサラスは無事に起動。連邦の大軍と五分の戦いを演じて見せた。直後、連邦の圧倒的兵力の前に陥落。
シロー・アマダ少尉
08小隊の隊長どの。しかし敵にさえ情けをかけるその優しさは軍人としては不適格、部下からも「アマちゃん」とバカにされている反戦自衛官。赴任先のサイド2が全滅の憂き目に遭い転地、しかし偶然戦場で出会った敵の士官・アイナと心を通わせてからは、なんだか知らないけど愛に生きる熱血戦士になってしまう。その「幸せ」は味方どころか敵にもおすそ分けされ、何かと「殺さない作戦」を考えていた。クセ者揃いの小隊にあって、不言実行により信頼を勝ち得た優秀な男といえよう。ギニアスとの戦いで片足を失うも、戦後はジャングルの彼方でアイナと仲良くやっているらしい。ガンダム版ロミジュリ、ここに完結。
「生きてアイナと添い遂げる!!」
テリー・サンダースJR.軍曹
三度目の出撃で必ず誰か死ぬ、そのため他人からは「死神」の汚名を奉られたゴッツイ男。今までに6機撃破という名うてのパイロットなのだが、性格は到って温厚、カレンにド突かれることさえあった。そして08小隊赴任後の三度目の出撃、彼は死神のジンクスに脅えながらも奮戦、しかし隊は誰一人欠けることなく生還を果たし、コンプレックスを解消した。序盤においてシローに助けられており(ボールで!!)、その恩に報いるためにも隊の中では彼に一層の信頼をしている。
カレン・ジョシュワ曹長
今まで幾人もの隊長を心労で倒れさせた、男勝りというかとにかく荒っぽい性格の女性。実力のみを頼りとし、権威も階級もお構いなし。戦争でかつて夫(軍医だったらしい)を失って以来、男というものを全く信用していないという。しかしシローにだけは他とは違う気配を感じ、仲間たち同様次第に彼を信頼するようになった。言葉遣いは粗野だが情に厚い、まさに「姐御」である。実は彼女自身も元医学生で、戦後は看護婦をやっているらしい。
「らしくなってきたじゃねえか……」
エレドア・マシス伍長
08小隊はホバートラックで通信士を勤めるロン毛のニイチャン。どことなく薄っぺらい印象を受けるが、実はとってもアツイ奴。フロンティアというバンドでギターを担当しているが知名度は低く、自分で自分の曲をリクエストしたりもしていた。閉所恐怖症のためコクピットには座れないが聴覚には優れ、索敵任務に抜群の才能を発揮する。一時戦場で負傷して(ワザト?)後退するも、最後には復帰して再び部隊を支えた。カレン同様シローの赴任以前から隊に所属、「アマちゃん」と呼んで彼を小馬鹿にしていたものの、次第にその実力を認めるようになる。声はクレヨンしんちゃんのパパ。
ミケル・ニノリッチ伍長
08小隊で部隊のバックアップの任務に就く若手兵士。実はガンダムに乗るつもりだったらしいが、エレドアと共にホバートラックの操縦にあたることに。現在でもMSに乗る夢は捨てておらず、名目上は予備パイロット。明るいがどこか臆病者、その上お調子者で幼さの残る性格だが、いつ恋人と死別するかもしれない恐怖と戦い続ける悩ましい青年である。暇さえあればその「B・B」という恋人に手紙を書き続けていた。戦後はキキと共にシローを探す旅に出ている。妙に弁の立つ彼女には、どうしても逆らえないようだ。
ジダン・ニッカード
コジマ大隊の補給中隊長。既に定年過ぎのおじいちゃまなのだがタフに酔っ払っており、口は酒臭く、発する言葉もどこか浮いている。しかもバクチ好きの女好き。理由は不明だがシローとその部下たちを常に気に掛け、彼らのピンチの際には大隊長直々の命令書をどこからともなく調達したりしてみせた。どうやら上層部にも相当なコネをもっているらしい。そんな謎めいた存在の彼だが、一番気に掛かっているのはマリアおばちゃま。
コジマ少佐〜大佐
極東方面軍の一隊、機械化混成大隊ことコジマ大隊を指揮する冴えないおじさん。08小隊にとって直接の上官にあたる。上の無理と下の不祥事に胃の痛い、無理からの中間管理職だ。連邦初のMS隊の指揮官ということで当たり障りのない人物を選んだのだろうか?しかし劇中ずっと冴えないおじさんだったワケではなく、イーサンの最後の誘い「ジャブローのオフィスは快適だよ」に対しては「私はエアコンというものが苦手でしてなぁ」と嘲り気味に返していた。直後にビッグトレーは沈み、ジャブローも七年後には消えてなくなることから、この選択は正しかったのではないだろうか。若い頃は、シローによく似たタイプの軍人だったという。
アイナ・サハリン
サイド3の名家(没落貴族)出身のお嬢様。自分の身代わりとなって不治の病を背負う兄を慕い、彼のためにテストパイロットとなる。基地の研究員たちからみれば、その様はまるで人形のようだ。しかし戦場で命を助けられた連邦兵・シローと心を通わせ始めた頃から兄は狂い出す。これに耐えかねた彼女は兄を見限りシローの元へ。その後、逃亡先で彼との間に一子をもうけた。いかなるときも敵を助ける戦い方をする、シロー同様アマちゃん軍人だが、それが二人をより強く結び付けたのだろう。怒ると何でも仕出かしそうだが、普段はとっても優しい。
「止めることなんか……できない」
ノリス・パッカード大佐
アイナの父親代わりとして忠勤する、イカツイ顔の職業軍人。サハリン家とは代々主従関係にあるようだ。パイロットとしての腕前も一流で、撃墜数はエース並とか。しかし宇宙に帰ろうとするケルゲレンを守るため、二度と帰れないと知りつつ単身08小隊の前に立ち塞がった。数多く布陣された機体を次々に打ち破っていく様は、まさに物の怪か何かである。無敵の強さを誇る彼だったが、シローとの死闘でコクピットを貫かれ、戦死。ランバラルにも匹敵するグフ使いとして、その存在はファンの心に今でも深く残る。
「死に場所を見付けました……」
ユーリ・ケラーネ少将
オデッサで連邦と戦い、幼なじみのギニアスのもとへ落ち延びたヨーロッパ方面軍の師団長。豪快な性格と荒々しい風貌、そして部下思いで情に厚いことで大変よく慕われているが、そのどこか図々しい性格のためにギニアスからはあまりよく思われておらず、昔からペースを乱されてきた兄をみて、アイナからも恨まれている。ラサの戦力を再編、ジオンのホームグラウンド・宇宙で再起を図らんと、ケルゲレンの出動を願う彼は、アプサラスの計画の中止を薦める。しかしギニアスはそれを承服せず、逆に爆殺という手段で葬り去った。
ギニアス・サハリン技術少将
アイナの狂気のお兄様。デギン公王直々にアプサラス計画を申し遣わっており、その完成を以てお家再建を目指している。そのためには旧友ですら謀殺するという彼のやり口は、非情を通り越して狂気の沙汰としか思えない。挙句の果てに計画は遅延を重ね、とうとうジャブローを襲撃することさえも叶わずに、ラサでイーサン麾下の僅かな連邦軍を巻き込んで破綻した。妹まで撃って、それでも叶わぬ夢なら最早自決か投降しか無かったと思うのだが。しかし「あんなおもちゃ」があれば彼でなくとも使ってみたくもなるだろう。ちなみに彼の身体は少年期に浴びた宇宙線がもとで死期が近付いており、それがより焦りに拍車を掛けていた。
「私の夢……受け取れェッ!!」
キキ・ロジータ
バルク村の少女。父に倣いゲリラをやっているが、その父が足を負傷してからは多くの村人たちを従え、実質的な攻撃の指揮は彼女が執っている。シローたちと出会い、連邦だジオンだという以前に人間としての彼らに好意を抱き、協力するようになった。文庫版では連邦兵による暴行の果てに舌を噛み切り自殺するというとんでもない悲劇が彼女を襲うが、OVA版では無事終戦を迎え、ミケルと共にシローを探してどこかのジャングルに潜り込んでいった。どうやら再会は果たせたようである。
