近年のリメイク作品において、旧作の悪役が出世を果たしつつあります。
映画版ではシロッコの階級が大佐になっていたり(大尉→大佐)、オリジンではマクベの階級が中将になっていたり(大佐→中将)。
今回はこれをテーマに書いていきましょう。
すなわち、ガンダム軍人の階級は、本当に職分相応なものなのか問題。
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まず、意外と理解されていない点から。
ファーストガンダムと、それ以降のガンダムでは、戦争の規模が全く違うということ。
これについては、第2次大戦とベトナム戦争を比べるとわかりやすいかも知れません(ガンダムには現実世界のオマージュが結構盛り込まれている)。
第2次大戦とベトナム戦争では、参戦国数と戦闘員数、犠牲者数にケタ違いの隔たりがあります。
が、冷戦のため、国内が反戦運動で割れたり、それらが生み出した音楽文化が花開いたり、あるいは現代になって幾多の名作映画が作られたりして、そんなこんなで社会科が好きじゃない子なんかは、規模どころか第2次大戦とベトナム戦争の時系列上の前後さえよくわからない子も少なくないんじゃないでしょうか。
あえて言いましょう。
ファーストガンダムは、第2次大戦。
Zガンダムは、ベトナム戦争です。
センチネルのモチーフにならうなら、
ファーストが戦国時代で、Zが幕末戊辰といったところでしょうか。
ガンダムに話を戻しまして、一年戦争は全人類規模の戦争で、総人口の3割が死にました。ウン十億が死んだわけです。
一方、グリプス戦役は連邦内部の権力争い。
ハマーン戦争に到っては、アクシズの総人口は入植当初でおよそ3万人(非戦闘員含む)です。
一年戦争とは、ジオン側からして規模がちがいます。
アクシズの場合、やらかしたことは「地球圈の制圧」という、かつてのジオンもできなかったとんでもないものでしたが、所詮は連邦の支配に浅キズを付けただけでした。
エゥーゴやティターンズといったビンビンのやつらを同士討ちにさせ、連邦正規軍の代表的人物がホワイト提督のような融和派だったからうまくいったようなものの、後には正規軍ではないメッチャーら、寄せ集めの新エゥーゴによって討伐されています。
グレミーの反乱が起こらずとも、状況はそう変わらなかったでしょう。
一年戦争の時に比べ、確かに兵器の性能は向上していますが、攻め手も守り手も共に進化してますから。モビルスーツVS戦闘機、戦車のようなワンサイドゲーム、大快進撃にはならないわけです。
余談ですが、あまりキャラクターの階級が知られていないネオ・ジオンにも一応【騎士】という「軍事称号」があり、初代ジージェネなんかでは、マシュマーは少佐格、ゴットンは大尉格で扱われていたように記憶しています。
ハマーン討伐後、新生ネオ・ジオンに参加したイリアが「中佐」として扱われていたところをみると、いつの間にか階級制度は復活していたようです。
イリアが中佐でシャアが大佐というのはいささか気になりますが、これはもうカダフィ・ルールでいいでしょう。シャアは永遠の大佐なのです。
そんな局地戦の時代ですから、ジオンの大ボス・ギレンと、連邦の実戦部門の大ボス・レビルが「大将」で、エゥーゴの大ボス・ブレックスが「准将」なのはヘンなのか。
……こんなもんじゃない? と思うわけです。
しかも、ブレックスは現役の武官でありながら連邦議員であり、軍閥の長でもあり、かつアナハイム社という強力な後ろ盾があるわけですから、階級以上の権力を有していたのは間違いないわけです。
ちなみにライバルのジャミトフは「大将」。
そこへきてティターンズ・ルールですから、一階級上の扱いで上級大将とか次帥級!(連邦にはありませんのであしからず)。
そんなムテキと対等にやり合うためには、スペースノイドの支持と赤い彗星の協力が必要不可欠だったわけです。
しかし、局地戦の時代にあって、彼らはあくまで別格です。
シャアのグリプス襲撃まで治安出動ぐらいしか活躍の機会を与えられなかったティターンズは、バスクの「大佐」がせいぜいでした(非公式作品では、ハムリン・アーカット中将のようなティターンズ将官もいます。が、残党としての階級なので、グリプス戦役当時どれほどの地位にいたかは不明です)。
そう考えてみると、武勲だけで大佐のバスクは大したもん(戦術の天才?)だし(そのわりにデラーズ紛争からさして出世していないが)、テレビ版の大尉から大佐に書き換えられたシロッコは、むしろ中佐ぐらいが妥当なのでは、と思ってしまいます。彼の場合、政治的な木星補正が多分に入っていそうですね。
ガンダムの軍人の階級より、むしろ階級にキッチリしているはずの銀英伝のバイエルラインの階級のほうが異様だったりするのです。
グリプス戦役に比して、一年戦争は壮大な戦いでした。
キシリアの代官として地球軍を指揮するマクベは中将(オリジン)、むしろ大将でもいいぐらいですし(ザビ家の兄弟との兼ね合いがあったのでしょう)、ソロモン攻略の指揮官・ティアンムが中将というのも、レビル死後に第6艦隊を率い、ア・バオア・クー攻略を指揮したダグラス・ベーダーが中将というのも納得できるところ。
他にも、08小隊に出てきたイーサン・ライヤーは大佐で、文庫版では少将の扱いでしたが、これも妥当です。
彼の率いるのは連隊で、現実の軍隊でも連隊長は大佐が主に充てられるのですから、文庫版で少将というのは、ラサ方面は重要なので格上が充てられた、または彼が優秀であり、かつレビルをライバル視しているというキャラクターをより際立たせるための演出だったのではないでしょうか。
(それにつけても『アドバンスド・オペレーション』に登場するマノフ「陸将補」はやりすぎでしたね。他の国にもある階級「上級大将」がナチスドイツっぽさを消せないように、「陸将補」は自衛隊の、というか日本にしかありませんからね。地球連邦軍はどこまでも米軍の香りなんだよなあ)。
強いて違和感を挙げるなら、むしろジオンです。
あれだけの規模と実力を誇った宇宙攻撃軍のボスが中将で、地球制圧の尖兵を擁する突撃機動軍のボスが少将というのは、ちょっとお兄ちゃんに遠慮しすぎかな、といった感はあります。
シャアの反乱後はどうでしょう。
私設軍隊ながら、クロスボーンはわりとちゃんとしていました。ザビーネは大尉だか中尉で大隊長。現実の軍隊では少佐格の仕事だそうですが、彼らは私兵集団ですから。「建国戦争」を謳っているので、そこらへんはいいじゃないですか。
むしろ、アンナマリーが「士官候補で小隊長、でも新鋭機乗り」というのは、ちょっとどうかと思いますが。
木星帝国についても、わりかし妥当です。
エリートのギリが少佐で、ベテランの叩き上げであるバーンズが大尉。
これも納得。
ただし、そこから上、ドゥガチ総統未満の顔が見えないのは不満ではありますが。
で、ここまではいいんです。
問題はこの人達。
ザンスカール帝国の指揮官を見てみましょう。
(次回へ続く。後編はこちら)
ガンダム階級論(前編)パプティマス・シロッコは大尉が妥当か?大佐か?
ガンダム階級論(後編)ザンスカール帝国の階級問題について考える!
逆説の黒歴史・人類黄昏編(前編)最終戦争とカイラスギリーの秘密
Author ウェブデザイナー久川智夫
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