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自由惑星同盟/第13艦隊/イゼルローン要塞首脳部

ヤン・ウェンリー元帥
軍幹部・高級将校 データ

■最強VS無敵
イゼルローン要塞の司令官。通称・魔術師ヤン、ミラクル・ヤン。商人の父と宇宙船の中で幼年時代を過ごし、長じて歴史を学ぶことを志す。しかしその父が事故で死ぬと、遺品の骨董品の大半が贋作だったため金銭上やむなく軍の戦史研究家へと進学して、卒業後エル・ファシルに派遣された。中尉時代、敵の鼻先からたった一人でエル・ファシル三百万もの市民を脱出させて以来武勲を重ね、エコニアでの混乱やレグニッツァを戦い抜き、更に第4次ティアマトにおいては殿軍を志願。戦場を暴れ回るラインハルトに迫った。その後もアスターテ、第7次イゼルローン攻略に成功を収め、本人望まずしてその名を確たるものとする。時運の赴くところ、アムリッツァ、ドーリア、第2次ガイエスブルグといった同盟の国運を左右する戦いにも尽力、この時点で既に元帥への昇進を果たすと、戦争の天才・ラインハルトと戦ったバーミリオンでは彼を前に勝ちを収め、帝国は壊滅して祖国・同盟は救われる筈だった。しかし彼の背後でトリューニヒトが動いて政府の名で停戦を命令した為、戦術で勝ったこの戦いでも文民統制の原則を固守した事から戦略で負け、自ら「歴史の本道を往くこと」を蹴っている。退役後はフレデリカとの新婚生活も束の間、レベロの陰謀で決起を余儀なくされると、民主主義擁護のためエル・ファシルに協力。再びラインハルトと対峙すると、緒戦に勝利して圧倒的な物量で迫る彼を講和のテーブルを持たせるに到った。専制政治が腐敗したときのための「民主主義の苗床」を確保せんと戦い、多くの犠牲によってそれを果たそうとした彼だったが、その会談に赴く途中で地球教のテロに倒れる。 33歳の若過ぎる死であった。
■銀河のどてらい男
普段はどこかフヌケたような風を漂わせ、何かといえば紅茶とブランデーと歴史書と年金を要求する彼だが、軍国主義的な精神論に対しては激しく憤るものがあり、特に「必勝の信念」という言葉を忌避。それゆえ対極にありながらも冷静で開明的専制君主・ラインハルトに対してはある程度の信頼を寄せていた節がある。作者を強く反映した存在だが、その点がお話の中の登場人物たる所以。彼のような軍人は存在しえないし、シェーンコップの「矛盾だらけ」という言葉はそこの予防線とも取れなくもない。尤もそれだけにミステリアスであるし大変魅力的、まこと愛すべきグータラ軍人であった。思想面のみならず人格面でも素晴らしいものを持ち、「軍人の民間人への危害」と「上官の部下への私的制裁」を心より憎悪。「民主国家における軍隊」の有り様を原則そのままにやってのけ、一度として民間人を犠牲にすることなく、一度として敗れることはなかった。ちなみに指揮卓の上で片膝を立てて座り込み行儀悪く指揮を採るクセがあったが、逆にこれが彼の天才としてのカリスマ性を高め兵たちの信頼を集めていたようである。艦隊旗艦はヒューベリオン。所属艦艇にオクシアナリューブリヤナナルビクカルディア25号

「――紅茶を一杯貰おうか?」
「もしもし、こちら葬儀屋……」
「ラップ!私は簡単にはやられない !!」
「ふぇー、ソイツは一大事」
「それではみんな、そろそろ始めるとしようか」
「辺塞、寧日なく。北地、春光遅し――か」
(そら来た!)
(ゲスの勘繰りに付き合っていられるか!)
「お前、いい子だよ!」
「キャゼルヌ先輩はひとつだけいいことをしてくれたよ。それは、お前を私のところへ連れてきてくれたことさ」
「軍人が暇なのはいいことさ」
「まあ大尉、何はともあれ今後ともヨロシク」
「お前に向けて閉ざすドアを、私は持っていないよ」
「コイツはとんだ権威主義に陥っていたかな?ミュラーを無視していたとは」
「キミの言いたいことは分かっているつもりだ。――だから何も言わないでくれ」
「他人がこんなことをしたら、バカに違いないと思うだろう。だけど、私は結局こんな生き方しかできないんだ」
「命の差し入れ、ありがとう」
「努力による進歩の後が顕著だね」
(だとしたら、ビッテンフェルトを応援するだろうな……)
「砲撃戦用意! ……撃てえーっ!」
「どうも、格好がよくないな……やれやれ、ミラクル・ヤンが血まみれヤンになってしまった……」
「ごめん、フレデリカ――ごめん、ユリアン――ごめん、みんな……」
(宇宙暦800年、6月1日、2時55分――ヤン・ウェンリーの時は、33歳で停止した)

アレックス・キャゼルヌ中将
軍幹部・高級将校 データ

イゼルローン要塞の事務総監。ヤン不在時には司令官代理まで勤める要塞ナンバー・ツー。士官学校時代にヤンと知り合って以来交流があり、またその優れた事務処理能力から信頼も厚い。組織工学に関する論文がとある大企業の経営陣の目に留まり、スカウトを受けたこともある。同校にはヤンの先輩として、事務次長の名で赴任した。シトレの次席副官を勤めた後は昇進、軍事に関してはド素人だが、史上最大の作戦・帝国領侵攻において補給を一手に握るなどデスクワークにかけては同盟随一の能力を発揮する。一時はアムリッツァ敗北の責任から辺境の補給基地へと廻されるが、ヤンからお声掛かりのイゼルローンでも三百万もの市民の生活を支え、再び有能ぶりを披露した。「キャゼルヌがくしゃみをすれば要塞全体が発熱する」とまでその力を評価されており、要塞は彼無しでは最早成り立たないだろう。武人ではないため第 2次ガイエスブルグの際は若干取り乱しもしたがよく守り、イゼルローン放棄においてはノアの箱舟計画を指揮。退役後もヤンの逃亡を知るや即座に合流して、彼の死後は軍政局長としてユリアンを支えた。同盟での最高職は後方勤務本部長代理。かつては代理を除いた地位すら期待されていたが、ロックウェルからほのめかされた時もこれを蹴り、後輩と行く道を選んでいた。統計的な仕事を生業としている割りに情には厚く、任務で引き合わせたにしてもユリアンにフレデリカと、人を見る目は確かなようだ。私生活においては上官の娘・オルタンスを迎え、間には二人の娘がいる。毒舌家だけに非主流のヤンとは気が合うが、そのくせカミサンには頭が上がらないらしい。毒が過ぎて彼女から釘をさされる場面さえあった。一人一芸が基本の銀英伝レギュラー陣にあって官僚的能力が採用された珍しい人物で、ユリアンの黒幕に徹したアッテンボロー以上の黒幕ともいえよう。

「ヤン、生きて還れよ! 死ぬにはバカバカし過ぎる戦いだ」
「おい、カネがないぞ」
「祭りはまだ終わらない、か……」

ムライ中将
軍幹部・高級将校 データ

イゼルローン要塞の参謀長にして、ヤン艦隊の主席幕僚。潔癖さと緻密さを持つ。エコニアでの混乱の事態収拾をヤンに評価され、後に開かれたヤン「幕府」では、出来は良くても素行不良な家臣のお目付け役を担わされている。以来ヤンと共に幾多の戦場を生き抜き、彼の退役後はチュンウーチェンの遣いとして、ヤンの死後は不平分子の取り纏め役として、悪名を被ってまでもヤン艦隊の父親代わりであり続けた。後にロイエンタールの使者としてイゼルローンに向かうが、ヤンの一番弟子の成長に満足して去っており、このときユリアンが呼び止めず、また彼もそれを求めなかったため、オーベルシュタインの草刈りによって不幸にも逮捕拘禁。その後の混乱によって負傷するも、シヴァ後再びユリアンと再会を果たした。彼の劇中最後の台詞は、作品の長さと相まってかなり感慨深いものがある。ところでヤンに幕僚として招かれたとき、彼は自分の役割りを、「ヤンに参謀は必要なく、自分の役割りは常識論を唱えること」と理解していたという。しかしこれは彼の地の部分であって、彼を発掘したヤンにこそ賞賛を与えるべきだろう。時折見せる優しい微笑みが心地良い。彼の人格を、ヤンだけが唯一「照れ屋」と直感していた。一番多い台詞は咳払いで、とにかく絶対に笑わない堅物。没個性が強烈な個性となっている好例で、その姿はどこかタックルの丸川珠代を彷彿とさせた。

「このあたりでローエングラム公を阻止しないと、後が無い」
「うちの艦隊は逃げる演技ばかり巧くなって……」
「もう、私の席はここには無いのにな……」
「時代のひとつが終わったということだな。ささやかなものではあったが、君や私にとってイゼルローン時代というものは確かにあった」

フョードル・パトリチェフ少将
軍幹部・高級将校 データ

イゼルローン要塞の副参謀長。ファイターとして知られる。エコニアの混乱の際ヤンの副官を勤め、後々幕僚に迎えられる。その巨体が与える安心感とハッタリの強さ、そして巨体そのものの強さを見込まれたようだ。同時にヤンだけが「洞察力の高さ」を評価しており、コステアの悪意の一を聞いて全てを理解した能力や、マシューソン相手の大ボラの機転などは、やはり幕僚として欲しいところだったろう。しかしヤンの参謀としての彼の仕事は「うなずく」ことにあり、凡人には理解し辛いヤン・マジックを兵たちに理解させることが本分。かつての悪知恵を、帝国軍相手に使う場面は遂に来なかった。正直ここに多く書くほど目立った行動もない男だが義理堅い人物で、ヤン退役後も彼に合流し、役目を果たしていた。しかし回廊の戦い後に会談に赴く途中を襲われ、寝惚けたヤンを逃がすために銃弾を受けて死亡。あるいはここでもしヤンが生き延びていたら、彼はミュラー以上に「鉄壁」の名が相応しい男となっていたかも知れない。

「楽しい未来図ですな」
「よせよ、痛いじゃないかね」

ブラッドジョー大佐
軍幹部・高級将校 データ

イゼルローン要塞の参謀。ラオと並んでその名があるが、活躍どころかマトモな登場の機会すら与えられなかった。

バグダッシュ中佐
特務兵・工作員 データ

救国軍事会議の構成員。諜報や破壊工作の専門家。ルグランジュの下を抜け出してヒューベリオンに潜り込み、ヤンの暗殺を試みる。しかしこれを見抜かれると、逆に転向を申し出て味方を裏切った。フェルナー並に図太い神経を持ち、捕虜として扱われている間も食事にワインを付けたり美人の女性士官をよこすよう要求したりとワガママ三昧。「主義主張などは生きるための方便」と言いのけ、ふてぶてしいまでに艦内を練り歩いた。クーデターの真相を同盟市民に暴露する演説をぶった後は地球教の調査にもあたり、ヤン逮捕後はレベロ襲撃計画にも活躍。裏切りによってイゼルローン組から白眼視されてきたが、やっとこさ地歩と信頼を築き上げた。更に要塞奪還においてはラインハルトを騙った情報戦を展開すると、「ペテン師の片割れ」、「見抜くヤツがいたら変人」と言われる程の凶悪トリックを仕掛け、ルッツを陥れている。その後ヤンを殺した地球教徒の尋問を担当し、これには自白剤まで使われた。どうやら同盟滅亡後はイゼルローンとハイネセンとの交信も難しくなったらしく、旧同盟の窮状を幕僚会議において報告する場面も。フレデリカによれば「以前父の前で現体制への不満を述べていた」とのことだが、そういう意味ではヤンとてあまり変わったものではない。「私が勝ち続ける限り裏切ることは無い」と予測する彼だったが、似た者同士なんとなく心情にも察しがついていたのかも。

「――半分は悲鳴だ。自分たちを見捨てないでくれと。要するに、そういうことだな」

フレデリカ・グリーンヒル少佐
副官・補佐官・侍従 データ

ヤンの副官。グリーンヒル大将の娘で、士官学校を次席で卒業した秀才。その優れた記憶力には定評があり、コンピュータ並とも囁かれる。エル・ファシルの脱出の際にヤンと知り合って以来彼の追っ掛けとして軍人を志願すると、卒業後は統合作戦本部に勤務し、ヤンにはキャゼルヌを通じて引き合わされた。それからは生活能力と記憶力の弱いヤンを公私共に支え、査問会の一件ではトリューニヒト派の妨害を受けつつハイネセンを奔走して、時の宇宙艦隊司令長官を頼るという大胆さも見せた。バーミリオンの際もヤンの行動に理解を示し、退役後は彼と結婚。式の直後レベロの陰謀でヤンが逮捕されても、インチキ二人組に従い間一髪で旦那さまを救い出している。その後は再び副官として彼に従い、死後は民主主義の灯火を受け継いで政治的指導者となった。副官としても政治家としても立派に全うした彼女だが、主婦としては発展途上だったようで、得意料理はみな「挟むもの」ばかり。結局満足いく料理を食べさせる前に、彼は逝ってしまった。常々ヤンという大人物の傍らにいたせいで「女性としての魅力」にのみ注目されがちな彼女だが、実は人間としての器もかなりのもの。父や旦那の死からもすぐに立ち直れた芯の強さに、イゼルローン百万の市民にユリアン、あまり絡みがあったとは思えないカリンからなど若い世代からの信頼は、ヤンの名望を差し引いても認められるべきものだろう。また、彼の最期の言葉まで正確に察していた点も素晴らしい。ヤンの思想面での後継者をユリアンとすれば、彼女は信望の面での後継者といえる。彼女の演説と直後の同盟国歌大合唱は、劇中五つのうちに入る名場面だった。

「イエスですわ閣下! ええ、喜んで!」
「アナタのなさることが、私はどうしようもなく好きだということです」
「そういつも、いつまでも、おとなしく言いなりになっていると思ったら大間違いよ!見ていてご覧なさい!」
「……あの人が死んだのね」
「ありがとうございます。そして、全てが終わったときには、ありがとうございましたと。そう申し上げることができればいいと思います」
「今度は私が死ぬまで死なせてあげないから……!」
「ありがとう貴方……私の人生を豊かにしてくださって」

ユリアン・ミンツ中尉
副官・補佐官・侍従 データ

ヤンの養子。軍人の父を亡くして祖母のもとで幼年期を送り、それをも失ってからはトラバース法のもと、キャゼルヌを通じてヤンの家に転がり込む。身体より大きなトランクを抱えての参上だったらしい。当初は生活能力のないヤンの世話をするため家政婦のような日々を過ごしていたが、兵長待遇でイゼルローン要塞に入ると、ヤンを支えようと従卒として健気に鍛錬。陸戦ではシェーンコップに、空戦ではポプランにと優秀な師匠の下で才能を磨いた。実はサバイバル能力にも優れたものがあり、帝国軍の駆逐艦を奪ってのフェザーン脱出や地球教の本部からの脱出など、強運と咄嗟の機転が発揮される場面でも才能を見せている。しかし彼は何より「ヤンの一番弟子」であり、軍事的にも思想的にも彼の持つものを数多く継承、かつてケンプ&ミュラーのトリックを看破したように、バーミリオンではラインハルトの艦隊配置も的確に指摘する。ヤンをテロから救えなかったという不覚はあったものの、革命軍司令官として見事に実を結んだ。その後はワーレンを撃退、シヴァではラインハルトの座乗艦に直接乗り込み、彼に会談を申し入れるに到っている。彼の「大言壮語」が、全110話にも渡る長い戦争を終わらせた。その後フェザーンで恋人・カリンが指摘した通り、彼らの決死の行動も結局は「故郷に自治権を取り戻しただけのこと」ではあったが、歴史的な意味合いはとてつもなく大きなものであった。彼は劇中最後に「銀河連邦の末期に政治を蔑ろにした人たち」の事とその行き着く果てについて語っているが、実はこれは彼らに関しても言えた話で、ついぞこのあいだ命懸けで戦い、多くの犠牲を出したのも、極論すれば「同盟末期に政治を蔑ろにした人たち」にこそ責任があり、彼らは血まみれになってその尻拭いを行なっていたようなものだ。義父に惹かれ軍人を志し、講和という最高の形でその道を極めた青年は、今度は義父の志した歴史家として名を残すだろう。再びの悲劇を、後の世で起こさせない為に。艦隊旗艦はユリシーズ。座乗艦にタナトスIII号ハメルン4号。所属艦艇にザグレウス。救助した船舶にニューセンチュリー号

「風邪ぐらいで気分出さないでください!」
「お幸せに……」
(帰ってきた! いるべき場所へ、共にいるべき人達のところへ!)
「希望は通じる! 努力は絶対報われる !!」
「何年か前の僕がいる……こうやって、想いというものは受け継がれていくのだろうか」
(歴史全体が加速しているのか。みな生き急ぎ、そして死に急いでいる……)
(自分で……自分で考えるんですよね、提督)
「そう、生き残った者にとって旅は続く。いつか死者たちと合流する日まで」
「僕は、この人たちの思い出話などしたくはない。この人たちと思い出話をしたい。――そのためにも」
「未来が存在する場所は、地球ではなくて―― !!」
「宇宙はどれほど輝きを失ってしまうのだろう……」
「だが、その時代が到来するに先立って、僕は会わなくてはならない。カイザー・ラインハルトに」
「歩かなくては……膝を追ってはいけないんだ……民主共和主義者は専制君主に対して絶対に膝を屈してはいけないんだ…… !!」
(ヤン提督……僕は貴方の代理として、この時代に冠絶した、巨大な個性の終焉を確かめます。提督が来世においでなら、どうか僕の目を通して、歴史の重大な瞬間を確認してください)
「貴様一人の命で、償えると思うな !!」
「星が落ちたよ、カリン……」

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